美しい庭園オーブランの管理人姉妹が相次いで死んだ。
姉は謎の老婆に殺され、妹は首を吊ってその後を追った。
姉が遺した日記を手にした「私」は、そこに綴られたオーブランに秘められた恐ろしい過去を知る。
かつて「少女」だったころの姉妹が辿った哀しい過去。
「少女」という仮面の下に隠された、楽園崩壊につながる驚愕の真相とは?
「ちがうの。聞いて。わたし考えていたんだけど……ここってただのサナトリウムじゃないわよね」
第7回ミステリーズ! 新人賞佳作受賞作
感想
本作は、異なる場所を舞台に生きる少女を巡る、5つの謎を収めた短編集です。
表題となっている『オーブランの少女』は、オーブランというとても美しい庭園と、それを長年にわたり管理し続けてきた姉妹の、過去と現在を巡る物語です。
とにかく美しい庭園オーブラン、そしてそれを寸分の狂いもなく管理し続けてきた、とても仲の良い管理人姉妹。
なんの問題もなさそうにみえていましたが、姉妹が相次いで死んでしまいます。
謎の老婆に殺された姉、それを後追いした妹。
誰からも恨みを買うような姉妹ではなかったはず。
真相を探り始めた「私」が、姉が遺した日記を手にしたとき、想像もしなかった恐ろしい過去が…
いずれの主人公も「少女」。
それはかわいい仮面をかぶった悪魔だったり、大人顔負けの勇敢な戦士であったり。
とにかく描かれている世界観の描写が美しい一冊でした。
個人的には、『氷の皇国』の世界観と人間模様がいちばん読みごたえがありました。
新しいファンタジー作品との出会いを求めている方、ぜひとも一読してみてはいかがでしょうか。
✐おすすめポイント
5つの作品にまつわる謎と、なんといっても、それぞれの物語の舞台となる世界の美しい世界観。
作品の冒頭(抜粋)
オーブランほど美しい庭は見たことがない。
湿り気を含んだ薫りの良い黒土に、青々繁々と奔放に育つ植物たちを目の前にすると、大地は生命の母などという陳腐な文句でさえ心からまことだと感じられる。
命尽きた花は大地に落ち、分解され、新たな息吹の素になる。
そんなサイクルを数十年、ひょっとしたら数百年も繰り返したこの場所はただひたすら、土と花と草だった。
緩やかな傾斜がついた1キロ四方に及ぶ広大なオーブランの庭と、麓の町の間には森があり、広く開削された森道には小さな屋台やカフェが数軒並んでいる。
町の人間にはとっておきの散歩道だ。
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