『オーブランの少女』深緑野分 著

夢がひろがる

美しい庭園オーブランの管理人姉妹が相次いで死んだ。
姉は謎の老婆に殺され、妹は首を吊ってその後を追った。

姉が遺した日記を手にした「私」は、そこに綴られたオーブランに秘められた恐ろしい過去を知る。

楽園崩壊に隠された、驚愕の真相とは?

オーブランほど美しい庭は見たことがない。
湿り気を含んだ薫りの良い黒土に、青々繁々と奔放に育つ植物たちを目の前にすると、大地は生命の母などという陳腐な文句でさえ心からまことだと感じられる。

命尽きた花は大地に落ち、分解され、新たな息吹の素になる。
そんなサイクルを数十年、ひょっとしたら数百年も繰り返したこの場所はただひたすら、土と花と草だった。

緩やかな傾斜がついた1キロ四方に及ぶ広大なオーブランの庭と、麓の町の間には森があり、広く開削された森道には小さな屋台やカフェが数軒並んでいる。
町の人間にはとっておきの散歩道だ。

本作は、異なる場所を舞台に生きる少女を巡る、5つの謎を収めた短編集です。

表題となっている『オーブランの少女』は、一見すると美しい庭園と仲のいい管理人姉妹ですが、そこには想像もつかない恐ろしい過去が隠されています。

おススメポイントは、5つの作品にまつわる謎もそうですが、なんといっても、それぞれの物語の舞台となる世界の美しい世界観でしょう。

個人的には、『氷の皇国』の世界観と人間模様がいちばん読みごたえがありました。

新しいファンタジー作品との出会いを求めている方、ぜひとも一読してみてはいかがでしょうか。

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