✐あらすじ
二冬続きの船の訪れに、村じゅうが沸いた。
しかし、積荷はほとんどなく、中の者たちはすべて死に絶えていた。
骸が着けていた揃いの赤い服を分配後まもなく、村を恐ろしい出来事が襲う……。
嵐の夜、浜で火を焚き、近づく船を座礁させ、その積荷を奪い取るー
僻地の貧しい漁村に伝わる、サバイバルのための異様な風習 ”お船様”。
難破船が招いた、悪夢のような災厄。
✐はじまり
波打ち際に、古びた菅笠が所々に動いている。
岩礁のつづく遠い岸に砕けた波の飛沫があがると、次々に飛沫が近づき、伊作の立つ岸の海水もにわかにふくれ上がって、岩に激突すると散った。
雨はかなりの降りで、海面は白く煙っている。
笠の破れ目から波しぶきのまじった雨水が流れ落ちていた。
岩礁のつらなる海岸に、わずかばかりの砂浜があり、そこにも笠が動き、岸に寄せられた木片が集められている。
伊作は、波がひくのを待って海水に足をふみ入れると、岩の間にはさまった流木をつかんだ。
破船した船の材にちがいなく、ゆるく弧をえがいていて釘穴らしいくぼみもある。
九歳のかれの力には余るものだったが、足を岩角にふんばって引くと材が岩の間から少しはなれた。
かれは、波頭が水しぶきを散らしながら近づくのを眼にして、岸に急いだ。
背後で波の砕ける音がし、海水が笠を音高くたたいて降りかかってきた。
波がひきはじめると、泡立つ海水の中にふみ込み流木に手をかけた。
✐さいごに
表紙からも伝わる漁村の過酷な環境。
父のかわりに必死にがんばる伊作は、幼なじみにさんま獲りを教わり、かわいい娘にひそかに想いを寄せ、毎日を全力で生きます。
だけど”お船様”が来てから村は……
オススメポイントは、生きるためならば、人はどこまで赦されるのか、悪事を働くくらいなら死んだ方が良いのか、考えさせられる複雑な展ストーリー全体でしょう。
過酷な環境だからやむを得ないのか。
生きるためならば悪事を働いても良いのか。
悪事を働くくらいなら死ぬ方が良いのか。
ヌルい生活をしてる自分には、正解を選ぶ権利はないと思いました。。。
生きることの意味をもういちど考えたいと思っている方、ぜひ、一読してみてはいかがでしょうか。