手芸好きをからかわれ、周囲から浮いている高校一年生の清澄。
一方、結婚を控えた姉の水青は、かわいいものや華やかな場が苦手だ。
そんな彼女のために、清澄はウェディングドレスを手作りすると宣言するが、母・さつ子からは反対されて――。
「男なのに」「女らしく」「母親/父親だから」
そんな言葉に立ち止まったことのあるすべての人へ贈る、清々しい家族小説。
第9回河合隼雄物語賞受賞作
感想
本作は、主人公とその家族が、それぞれに違和感を感じている”男らしさ女らしさ”に苦悩しながら、家族で現実と向き合い、乗り越えていく家族小説です。
“男らしさ” とか “女のくせに” とか、無意識のうちにレッテルを貼ってしまう行為は、多様性が叫ばれている現在においても、どうしても拭い去ることができないものです。
それはとてもデリケートなものなので、たとえそれに違和感を感じていたとしても、声を上げることは勇気が必要だし、誰かに貼られたレッテルを声高に否定することも、同じくらい勇気が必要です。
また、たとえ自分で違和感を感じていたとしても、それを受け入れること、それに気づくことも難しいのかもしれません。
本作では、男らしく、女らしく育ってほしいと願う母親と、違和感を感じている子どもたちとの葛藤が、優しい言葉で丁寧に導かれています。
それぞれが抱えた性に対する違和感をどのように受け入れていくのか、その過程はとてもあたたかなものでした。
”らしさ”に迷っている方、ぜひ一読してみて、”自分らしさ”を見つけるヒントを探してみてはいかがでしょうか?
こんな人にオススメ
男(女)らしさ、◯◯らしさがなんだ!
らしさの不満を優しくわかりあいたい


