私は、この醬油蔵の当主になる!
大阪万博前夜。父の実家である奈良の由緒ある醬油蔵で暮らすことになった少女、銀花。
蔵を切り盛りする祖母の多鶴子ら一家に馴染もうとするが、母の盗癖、祖母と父の不仲、自らの出生に関する真実に悩む。
やがて成長し蔵を継ぐため奮闘する銀花は、一族の秘められた過去を知ることにーー。
”罪ではない罪は普通の罪よりずっとタチが悪い”
”どんなときにでも誰かのことを考えられる、という心の在り方を強さと呼ばずしてなんと呼ぼう”
家業に身を捧げ、新たな家族を築く女性の半生を力強く描く長編小説。
感想
本作は、不遇な生い立ちを抱えた少女の銀花が、醤油造りに奮闘しながらたくましく成長していく姿を記した家族史小説です。
絵描きながら跡継ぎを強要される銀花の父
美しく料理上手ながら、盗み癖がある銀花の母
二人を守ろうと、健気に動き回る銀花
しかし、銀花を待ち受ける展開は、あまりにも理不尽で残酷なものばかりで、一気読みするのはなかなか大変です。
歴史のある醤油蔵の行く末を心配する当主の気持ちもわかるし、それを長年支え続けてきた杜氏の気持ちも痛いほどわかります。
かたや、血縁関係だけで跡継ぎを強いられる父の気持ちも。
それぞれが抱える境遇、真意、過去は、もちろんバラバラなので、自分以外の誰かと同じ空間に居る以上、すれ違いが起こるのは仕方のないことです。
それをお互いにどう歩み寄れるか、どのようにして歩み寄るのか、どんなカタチで受け入れたらいいのか、深く考えさせられた作品でした。
誰かとの距離感に迷っている方、受け入れがたい現実に思い悩んでいる方、ぜひ一読してみて、その答えを探してみてはいかがでしょうか?
こんな人にオススメ
主人公が成長する歴史小説が読みたい!
重厚なストーリーでとにかく泣きたい!


