日本人の多くが「一家団欒」という言葉にあこがれ、そうあらねばならないという呪縛にとらわれている。
しかし、そもそも「家族」とは、それほどすばらしいものなのか。
実際には、家族がらみの事件やトラブルを挙げればキリがない。
それなのになぜ、日本で「家族」という幻想に取り憑かれ、口を開けば家族の話しかしない人もいる。
そんな人達を著者は
「家族のことしか話題がない人はつまらない」
「家族写真入りの年賀状は幸せの押し売り」
と一刀両断。
家族の実態をえぐりつつ、「家族とは何か」を提起する一冊。
感想
本作は、家族というコミュニティの本当の意味を考え直すのに必読の一冊です。
そもそも家族とは、「同じ家に住み生活を共にする、配偶者および血縁の人々」のことを言います。
同じ家に住んでいるので、当然他の誰よりもお互いを理解しているはずで、困ったときには助け合い、みなが幸せになるために一致団結して・・・というものだと思いがちです。
しかしその反面、互いの足を引っ張りあったり、嫉妬や恨みつらみも人一倍、その関係が壊れてしまえば取り返しのつかないものになってしまいます。
その原因の一つが、家族というものへの過剰な幻想でしょう。
家族なら全てわかりあって当然、隠し事なんて必要ない、支えあうのは当たり前。
はたしてそうなのでしょうか。
家族はけっきょく一番近い他人であり、親兄弟であっても性格も考えもばらばら、すべてが一致することなんてありえないのです。
本作ではそれを系統立てて説明してあり、家族関係を考えるとてもいいきっかけをもらえました。
家族関係で悩んでいる方、これから家族になる方、ぜひ一読してみてはいかがでしょうか。
✐おすすめポイント
一家団欒という家族の理想(幻想)を、”幸せの押し売り”や”つまらない”とうの厳しい言葉を沢山おりまっぜながら、ずばずばと切り裂いていくところ。
✐推しの一節
仲の良い家庭よりも、仲の悪い家庭のほうが偽りがない。正直に向き合えば、いやでも親子は対立せざるを得ない。
いつもニコニコして、表面的に仲の良い家庭は誰かが我慢していていずれ崩壊します。それよりも、ほんとに楽しいときだけ笑って、腹が立ったら怒って意見をぶつけ合う、そうやって形成された家庭のほうがずっと長続きするものだと思います。
そのためにも、親の過干渉は気をつけないといけません。
作品の冒頭(抜粋)
友人・知人に会うと、
「あなた、家族のこと知ってる?」
と聞く癖がついた。
「もちろん、よく知ってるに決まってるじゃない」
と怪訝な顔で答えが返ってくる。
「ほんとに?」
重ねて聞くと、不思議そうに問い返される。
「どうしてそんなこと聞くの、あなたは知らないの?」
その通り、私は最近、自分の家族について何も知らなかったと愕然としているのだ。
一人、二人と失っていくに従って、大切なことを聞いていなかったなと気付かされる。
父はほんとうは、何を拠り所にして生きていたのか。
母ななぜ私に異常とも思える愛情を注いだのか。
兄は妹でる私にどんな感情を抱いていたのか。
何一つ知らなかった・・・・・・。
もっと早くに聞いておけばよかったと思うが、後の祭りである。
彼等は話のできない世界に行ってしまっている。
あれこれ想像をたくましくするだけである。
むしろ親しい友人・知人とは、わかり合おうと努力するせいか、よく話をし、お互いのことについても知っている場合が多い。
情に溺れることなく理性で判断しようとするから、的確に把握することもできる。