「あなたは誰?」
徐々に息子の泉を忘れていく母と、母との思い出を蘇らせていく泉。
ずっとふたりで生きてきた親子には、決して忘れることのできない”事件”があった。
そう、かつて ”母を一度失った” ことを。
記憶が消えゆく中で、泉はずっとしまい込んできた過去に手を伸ばす……
過去から去り行く母と息子の、愛と記憶の物語。
感想
母の百合子とふたりで生きてた泉。
泉には、幼いころからずっと百合子に確かめたいことがあったのですが、触れてはいけない、真実を知るのが怖いという気持ちから、ひとり胸の奥に封印していました。
しかし、泉が結婚し家を出る日が近づく中、百合子の記憶が次第に消えていくことに気づきます。
病状が進行し、記憶が薄れゆく百合子。
このまま記憶をなくしてしまえば、あのときの真相を確かめることはできなくなってしまう。
それは同時に、泉自身が一生この記憶を抱えたまま生きていかなければならない、ということでもあります。
このまま百合子には穏やかに過ごさせてあげたいという想い。
わからなくなってしまう前に、どうしても百合子の口から真相をきかせてほしい。
そして、泉が出した決断は……
真実を知ることが果たして幸せなのか、親子だからこそ守るべき、触れずにおくべきことがあるのではないか、そう感じる作品でした。
老いてゆく親と上手に向き合うことができない、そんな方にこそ、ぜひ読んでほしい作品です!
こんな人にオススメ
老いゆく親と向き合うきっかけがほしい!
家族との関係に悩んでいる方


