『白夜行』東野圭吾 著

優しく寄り添う

1973年、大阪の廃墟ビルで一人の質屋が殺された。
普段から、子どもたちの遊び場となっていた現場の廃墟ビル。
顔見知りの犯行と踏んだ刑事の笹垣は、解決は秒読みだと思っていた。
しかし、容疑者は次々に浮かぶが、けっきょく事件は迷宮入りする。

「被害者」の息子、桐原亮司と、「容疑者」の娘、西本雪穂。
あまりにも暗い目をした少年と、並外れて美しい少女。

二人はその後、全く別々の道を歩んでいく。

それから数年後、別の事件を追う笹垣の耳に、聞き覚えのある二人の名前が聴こえてくる。

桐原亮司と西本雪穂。

調べてみると、二人の周囲には幾つもの恐るべき犯罪が見え隠れしていた。
だが、いずれの犯罪も、何も証拠はない。
そして19年……追い続けた笹垣が、たどり着いた真実とは?

近鉄布施駅を出て、線路脇を西に向かって歩き出した。
十月だというのにひどく蒸し暑い。。
そのくせ地面は乾いていて、トラックが勢いよく通り過ぎると、その拍子に砂埃が目に入りそうになった。
顔をしかめ、目元をこすった。

笹垣潤三の足取りは、決して軽いとはいえなかった。
本来ならば今日は非番のはずだった。
久しぶりに、のんびり読書でもしようと思っていた。
今日のために、松本清張の新作を読まないでいたのだ。

右側に公園が見えてきた。
三角ベースの野球なら、同時に二つの試合ができそうな広さだ。
ジャングルジム、ブランコ、滑り台といった定番の遊戯設備もある。
このあたりの公園の中では一番大きい。
真澄公園というのが正式名称である。

その公園の向こうに七階建てのビルが建っている。
一見したところでは、何の変哲もない建物だ。
だが、その中が殆どがらんどうの状態であることを笹垣は知っている。

被害者の息子と容疑者の娘。
一見、それ以外の接点がないような二人ですが、とても強い絆で結ばれています。
その絆の強さにより、解決秒読みと思われた事件は迷宮入りし、ベテラン刑事の笹垣でさえ、19年も真相にたどり着けません。

本作の見どころは、なんといっても亮司と雪穂の絆の強さ、そしてそれを互いに証明するために積み重ねる完全犯罪の巧妙さでしょう。

そして迎える結末で、読者は究極の愛のかたちを目にすることになるはず。

余談ですが、私はドラマが先だったので、亮司のイメージは山田孝之、雪穂のイメージは綾瀬はるかでした。

重厚なサスペンスと究極の愛のかたちが織り交ざった本作、また、山田孝之や綾瀬はるかファンの方、ぜひ、一読してみてはいかがでしょうか。

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