『火喰い鳥を、喰う』原浩 著
お前の死は私の生
まただ。またいつもの夢。
私は自分の身体が夢境の泥沼にあるのを認識している。
夢から覚醒しようともがくが、下肢は粘液に囚われて思うようにならない。
『火喰い鳥を、喰う』より ...
『夫の骨』矢木純 著
その朝、私はいつになく早い時間に目を覚ました。
はっきりとは覚えていないが、夫がいた頃の夢を見ていた気がする。
夫の孝之の低い声、柔和な目を思い起こしながら、胸の底が揺れるような、落ち着かない気持ちで体を起こした。 ...
『オーブランの少女』深緑野分 著
美しい庭園オーブランの管理人姉妹が相次いで死んだ。
姉は謎の老婆に殺され、妹は首を吊ってその後を追った。
姉が遺した日記を手にした「私」は、そこに綴られたオーブランに秘められた恐ろしい過去を知る。
かつて「 ...
『命売ります』三島由紀夫 著
目覚めたのは病院だった。
まだ生きていた。
「命売ります。お好きな目的にお使いください。当方、27歳男子。秘密は一切守り、決して迷惑はおかけしません」
必要とも思えない命、これを売ろうと新聞広告
『すいかの匂い』江國香織 著
あの夏の記憶だけ、いつまでもおなじあかるさでそこにある。
つい、今しがたのことみたいにー
バニラアイスの木べらの味、ビニールプールのへりの感触、おはじきのたてる音、そしてすいかの匂い。
無防備に出会って ...
『TUGUMI』吉本ばなな 著
病弱で生意気な美少女つぐみ。
東京の大学へ進学したまりあは、ある夏、つぐみの誘いもあってふるさとである海辺の小さな町に帰省する。
まだ淡い夜のはじまりに、つぐみとまりあは、ふるさとの最後のひと夏をともにする少年に出 ...
『砂の女』安部公房 著
砂丘へ昆虫採集に出かけた男が、砂穴の底に埋もれてゆく一軒家に閉じ込められる。
考えつく限りの方法で脱出を試みる男。
家を守るために、男を穴の中に引き留めておこうとする女。
そして、穴の上から男の逃亡を妨害し ...