『二人の嘘』一雫ライオン 著

優しくなれる作品
女性判事・片陵礼子の経歴には微塵の汚点もなかった。
最高裁判事への道が拓けてもいた。

そんな彼女はある男が気になって仕方ない。
かつて彼女が懲役刑に処した元服役囚。

近頃、裁判所の前に佇んでいるのだという。

違和感を覚えた礼子は調べ始める。

それによって二人の人生が宿命のように交錯することになるとも知らずに……。

”恋で終われば、この悲劇は起きなかった。”

美貌の女性判事と謎多き殺人犯、宿命に翻弄される女と男の感涙のミステリー。

感想

本作は、誰もが羨む美貌の女性判事と、彼女が判決を下した元服役囚が、互いの境遇を通して人間らしさと向き合い、自分自身を取り戻す苦悩を描いた作品であり、同時に胸が張り裂けそうになるくらい切なすぎる恋愛小説でもあります

主人公の礼子はとにかくスペックが半端ない。
誰もが羨む美しさとスタイル、東大在学中に司法試験にトップ合格した頭脳、冷静沈着な判断。
だけど、複雑な生い立ちもあって”人間らしい”感情を持ち合わせていません。

一方で、かつて礼子から懲役刑に処された蛭間隆也。
蛭間もまた、複雑な生い立ちから感情を押し殺して生きていました。

”そんな二人”が再会したことで展開は思わぬ方向へと進み、ラストは胸が張り裂けそうなほど切なかったです。

”そんな二人”だったからこそ、わかり合い、通じ合えたものがあったのだろうと。

生まれ育った環境や境遇が恵まれないものだったとき、自分を守るために順応するのか抗うのか。
だけど結局、礼子のように完璧な人間でさえ、何が正しかったのか大人になるまでわからなかった。
そんなところに、この作品の深さを感じました。

こんな人にオススメ

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