お前の死は私の生
まただ。またいつもの夢。
私は自分の身体が夢境の泥沼にあるのを認識している。
夢から覚醒しようともがくが、下肢は粘液に囚われて思うようにならない。『火喰い鳥を、喰う』より
信州で暮らす久喜雄司に起きた2つの異変。
久喜家の墓石から太平洋戦争末期に戦死した大伯父・貞市の名が削り取られ、同時期に彼の日記が死没地から届いた。
貞市の生への執念が綴られた日記を読んだ日を境に、雄司の周辺で怪異が起こり始める。
祖父の失踪、日記の最後の頁に足された「ヒクイドリヲ クウ ビミ ナリ」の文字列。
これらは死者が引き起こしたものなのか?
”生への執念が綴られた日記がもたらす様々な怪異の真相”
第40回横溝正史ミステリー&ホラー大賞
感想
本作は、信州の田舎を舞台に、生きることへの執念と生きている者たちの執念が織り交ざって怪異をもたらすホラー作品です。
久喜家の主である雄司は、ある日、墓参りをした際に墓石から大伯父・貞市の名が削り取られていることに気づきます。
大伯父の貞市は、かつての太平洋戦争に従軍し、終戦間際に戦死したと聞かされていました。
墓石を削った犯人も、その目的も意図もわからぬまま困惑していると、時を同じくして貞市が戦没したと言われている地から、彼が最後に書き記したという日記が届けられます。
そこに記されていたのは、おぞましいほどの生への執念。
それらを機に、周囲では様々な怪異が……
戦地で”喰った”とされる、日記に記された「ヒクイドリ」とは、いったい何なのか?
怪異の正体は貞市の執念によるものなのか?
第40回横溝正史ミステリー&ホラー大賞受賞作だけあって、作品を通して重たい空気がじわりじわりと伝わってきました。
特に、日記に記された貞市の生への執念は、深い闇を感じました。
刺激的な夜の読書を求めている方、ぜひとも一読してみてはいかがでしょうか。
こんな人にオススメ
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