『間宵の母』歌野晶午 著

恐れおののく

小学三年生の詩穂と紗江子は親友同士だったが、紗江子の母の再婚相手である義父と詩穂の母が失踪、駆け落ちと見られていた。

その日から、紗江子の母の精神状態は普通ではなくなる。
詩穂も父親からDVを受けるようになり、児童養護施設に入れられてしまう。

その後、二人は地獄のような人生を送ることになるのだが、実は驚くべき真実が隠されていた。

紗江子ちゃんのおとうさんは、昔、ジャニーズだったんだよ!
愛称はユメドノ!
ダンスのレッスンで前十字靭帯を断裂してしまって泣く泣く引退したんだって!

ふわっと耳にかぶった髪、カールした睫毛と潤んだ茶色の瞳、細長く締まった鼻、髭のないつるんとした口元、笑うと右にだけできるえくぼ、行儀よく並んだ目映い歯、すらりと伸びた手足を包むのは白地に花柄のシャツとタイトなパンツ、という王子様のような見た目に加え、間宵由夢之丞という芸名のような本名から、そういう妄想がかきたてられたのでしょう。

学校中に広まった噂は結局ウソネタでしたが、そうとわかっても、紗江子ちゃんパパの人気が落ちることはありませんでした。

保護者参観授業で夢之丞さんが教室に入ってくると、おかあさんたちの口元はゆるみ、頬にぽおっと朱が差します。

本作は、親友同士だった二人の少女をとりまく、驚愕のヒトコワ作品です。

親同士が駆け落ちしたと思われたことを機に、崩れ落ちてゆく二人の人生。
絶望の先にたどり着いた真実は、あまりにも予想だにしないものでした。

おススメポイントは、夢のような理想的なご近所関係が見るも無残に崩壊してく様、ただのヒトコワというだけでは終わらず、その背景に隠された真実に気づく瞬間でしょう。

穏やかなご近所さん、仲のいいママ友、果たしてそれは本当にそうでしょうか?

究極のヒトコワ作品を探している方、ぜひ、一読してみてはいかがでしょうか?

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